prism-YUKA・AYAKA 08’1th


■1月7日(月)■11:00〜12:00
YUKAちゃんとAYAKAちゃんは二卵性双生児、小学3年生で普通クラスに通っている. 双児といっても二卵性だから似ていないし、性格もどちらかというと正反対.けれど お互いになくてはならない存在、とても仲の良い姉妹だ.いつもPRISMを楽しみにしてくれて、毎週(月4回)通ってきている.
さて、今日は今年最初のPRISM.今日はミツロウ粘土で小さな小さな「お正月の風物小物(お雑煮)」を作った.ミツロウとは、ミツバチが蜂の巣を作るときに体内から出す蝋成分を集めて固めたもので、西洋ではこれでロウソクが作られることが多い( …余談だが、ハニーコムという種類のハチミツがあるが、ハチミツの中に蜂の巣の断片やこのミツロウが混じっていて、ふつうのものよりコクがあって美味しいし栄養価も高い.).PRISMでのお祈り、その他にも RAUMで行うクラスでも全てこのローソクを使用しているが、お隣のペロルさんで扱っているので、なくなるとすぐに補充できて助かっている.
そのミツロウに色素と(たぶん)少し柔らかくなるやすいような成分を混ぜて板状に形成されているのが、このミツロウ粘土.ミツロウ粘土は手の中で揉んでいくと体温でだんだん柔らかくなる…そして少し甘い香りがしてくる.ミツロウの香りにはアロマ効果もあるという.たいていの子どもは体温が高いのですぐに柔らかくなって、そうなると 丸めたり、飴細工のように引き伸ばしたり、自由自在に形成できるから面白い.色も数種類あり、しかも独特の透明度があるのでとても美しい.手の中で暖めながらの作業では小さなものしかできないが、子どもはミニチュアが大好き.かえってそれが良いようだ.

これなら、相変わらず粘土があまり好きでないAYAKAちゃんも、抵抗なく楽しむことができる.また、手の平から指先まで全体を使うことによって、身体の代謝系にも働きかけるので、この二人にはよくミツロウを与える.…さて、AYAKAちゃんは私が作るものをよーく見て( おそらく私の手の動きなども観察しながら )、最初は私と同じものを作る.そのうち慣れてくるとオリジナルに取り掛かり始めるが、彼女独特のけっこう味のあるいい形を作る.YUKAちゃんは造形が得意分野なので、最初に課題の提示のみ聞けば、あとは私に頼らないで自分のイメージと感性でどんどん作っていく.お椀を作るときにちょっと苦労したが、最後まで自分で作りとおす…そのあたり、彼女にはプライドがアルのだ.そして、とてもオリジナルなお雑煮の具ができた.
二人とも、とても可愛いものができたのに写真を撮るのを忘れていた.しかも気に入ってそのまま家に持って帰ったので、撮影できない.残念なので、代わりに私の作ったものを掲載する.


■1月21日(月)■16:00〜17:00
今日は ぬらし絵を描き、その次に次回から始める織物の準備として丸い織り機の枠に縦糸を通す作業をした.この縦糸通しは簡単そうに見えて、ちょっと難しい.パターンを理解してしまえばいいのだが、慣れないうちは大人でも間違ってしまうくらいだ.

   


■1月22日(火)■17:00〜18:00
今日は火曜日だが前々回のお休みの分を振り替えて行っている.前回から撮りかかった丸い織り物.いよいよ毛糸を織り込み始める.YUKA&AYAKAちゃんは四角枠で以前織ったことがあって、それは大好きだった.グラデーションの毛糸を使ったので、かなり素敵な物が織り上がった.しかし、この円形にはちょっと難しい要素が入ってくるので、サポートが必要だ.…ところがYUKAちゃんにとっては やはり得意分野なので、すぐにパターンを理解して、あとは黙々と取り組むことができる.…どちらかというと動くことやファンタジーが好きなAYAKAちゃんは、途中で疲れてちょっと遊び始める.私はといえば、彼女に対して促しはするが、特に強制しない.PRISMの場においては、あくまで自由な楽しみが失われてはならない.そうでありながらも、子どもたちが本質的な体験を得られるように導くのが、私の役割なのだから.AYAKAちゃんの場合、彼女の興味と自発性に働きかけるためには、一緒に何かをするということと、その際のきめ細かいサポートが必要になってくる.何を求めているかということは、ひとりひとりによって異なるのだから.
さて、そんなふうに作業に集中しながらも、傍らで素語りもできたりするのが手仕事の良いところ.今日は、織りながらあれこれと楽しい話をしたり、日本の民話 『かさ地蔵』 を物語ったりした.旧暦のお正月は2月の節分頃なので、ちょうど今の時期にふさわしいお話だった.

   


■2月4日(月)■11:00〜12:00
今日も前回の織物の続き.「お家でやってもいいよ」と私が言って道具を持ち帰った二人だったが、家では時間がなかったようだ.ほとんどの子どもがそうなのだが、だいたいPRISMでやることは、PRISMでしかやらない(…?).つまり「場」というものが活動を限定するということなのだろう.
ちょっとこのケースとは話が異なるが、もちろん大人になって応用力というものが身につけば、どんな場所でも目的に応じてフレキシブルに利用できるようになるかもしれない.けれど、そこで繰り返される内容が、空間そのもののに何か雰囲気のような目に見えないものを付加していくということもある・・・これはあくまで感覚の領域の話だけれど、確かにそうであることは否めない.芸術家のアトリエというものはそういうものであって、私なども 毎日 RAUM に一歩足を踏み入れると、日常とは異なる世界に入っていく…つまり意識状態の変容を自覚している.でも、だからと言って RAUMは怪しい空間などではないから!毎日々子どもたちがやってきて、祈りで始まる時間がある…私はこの空間は天使に守られていると思っている.空間の人に与える影響は計り知れないものがある.

さて、今日も元気なYUKA&AYAKA.織物を始める前に、持参した節分祭りの余り豆を袋から出して食べ始めた…それも、上に放り投げて口でキャッチするという、あの食べ方で.実は、私はこの類の遊びが大得意なのだ.二人はまだやり始めたばかりでうまくいかない.そこで、私が秘法を伝授することに.私が天井まで放り投げた豆を いとも簡単に口でキャッチすると、弟子たちから拍手喝采があがる.彼女たちも「よーし、あんなふうにできるようになろう!」と思うのだろう.いきなり気合が入って、うまくいくまで何度も何度も繰り返す.私のアドバイスにもちゃんと耳を傾けつつ、そうこうしているうちにAYAKAちゃんはとても上手になった.YUKAちゃんも あと一歩!というところまで行った.
「こういう遊び、お母さんには お行儀悪い!って叱られるかな〜?」と訊くと、「ううん.でも、あんまりいつまでも止めないと いい加減にしなさいって言われるよ 」との答え.いつもやさしくて、本当に子どもを理解されているYUKA&AYAKAちゃんのお母さんなので、たぶん遊びの大切さも分かっておられるのだろうと思う( たしかに度を越さないとは大事なこと ).子どもたちの好きなこういう種類の遊びには、感覚を育成するための大切な要素が含まれていることが多い.だから「食べ物を粗末にしない」とか「食べ物で遊ばない」などという躾の話とは異なる視点をもっていたい.でも、落ちた豆も全部きれいに食べた( …汚いかな〜?RAUMの床はとりあえず掃除しているし、人間は落ちたものを少少食べたところで害はないから ).
そのあとは、お話を聞きながら静かに流れる織物の時間.ちょうど節分、日本の昔話『泣いた赤鬼』(これは現代の創作童話かな?)を話した.織物のほうはYUKAちゃんは完成に近いところまで進んだ.AYAKAちゃんは私に習いながら、ゆっくり織り進めた.

    


Profile

■2007年7月23日(月)■1:00〜12:00 ※夏休み時制
今日も元気な双子のYUKAちゃんとAYAKAちゃん. お母さんに連れられてニコニコ笑顔でアトリエに入ってくると、さっそくピアノを弾き始めた.二人とも音楽が大好き.
学校にあまりなじめないYUKAちゃんは、夏休みに入って気持ちが楽なのか、今日はとても落ち着いている.AYAKAちゃんはいつものとおり、大切なぬいぐるみ 白トトロの(ショウちゃん)をつれてきて、いつものようにおどけたり、ときに満面の笑顔をふりまいてくれる.
今日は ミツロウ粘土をやろうときめていた…が、AYAKAちゃんが 最近 過剰に潔癖で、粘土の類はなかなか受け付けないようになってきた.幼稚園からプリズムに通い始めて3年目になるが、小学校1年生くらいまでは 粘土でも取り掛かりに多少の戸惑いはあるものの、やり始めたら最後まで楽しく熱中できていた.しかし2年生になった頃から「べたべたして気持ちわるい」とか「汚いから嫌だ〜」と言い始めた.それも最初は土の粘土だけだったのが、「ミツロウ粘土も嫌だ」と言い始めた.つまり、粘土と名のつくものは全部ダメだ、と、自分で思い込んでいるのだ.ちなみにプリズムで使う粘土は焼き物用の粘土を使用している.油粘土は使わない.
AYAKAちゃんは、もともとお話や読書やごっこ遊びが大好きで、絵を描くのも好きだし、とても良い色彩感覚と筆のタッチをもっているのだけれど、どちらかというと、創作活動よりもファンタジー(=想像)の世界に身をおいていたいタイプ.心根がとてもやさしく、まだ幼いのに人の気持ちをおもんぱかる才能に恵まれていて、幼稚園のころは常にYUKAちゃんをサポートしていた.外側の世界をよく観察し、社交的でもある…が、ゆえに自分自身に無理を課してしまうところもあるのではないかと思う.それで時どき苦しくなってしまって、気のおける人の前ではダダッコ赤ちゃんにかえる.それも必要なのだろうから、赤ちゃんになるときは存分に甘えさせてあげたい.…私には、彼女の気質は憂鬱質と多血質の混合に見える.
一方、対照的なYUKAちゃんは、常に内面の世界に生きている.彼女は、非常に豊かで、確信に満ちた独特な魂の世界をもっている。彼女から時どき出てくる直観的な言葉には、私も「ハッ」とさせられることがある.しかし、外側の社会と折り合いをつけるのが苦手だ.合わないものに無理して協調しようとすると、リバウンドが大きく来てしまう.そのような内側の世界に閉じようとする傾向は、彼女の軽いハンデいキャップから起因するとされているのかもしれないが、私はそうとばかりは言えないとも思う.その証拠に、ここ プリズムでは彼女はとても積極的に活動するし、1年位前から自宅でも絵を描き始めたらしく、時どきスケッチブックを見せてくれるのだが、その模写力や表現力には目を見張るものがある.
YUKAちゃんが、もしも完全に外側の世界に閉じていたら、こんな表現はできないだろう.だからきっと彼女なりのやり方で、世界に向かってちゃんと開いている…そのことさえ解ってあげることができれば、YUKAちゃんに対してどのように接したらいいのか?が、自ずと見えてくるものだ.ともすれば、周囲の大人が自分の在り方を見直さなければならない状況に至ることだってあるやもしれぬ.
さて、二人のクラスは ぬらし絵とフォルメンを中心に、時どき粘土や自然素材を使った手仕事をやっている.もちろんそればかりではなく、クラスにファンタジーの要素を取り入れたくて、お話や即興演劇なども遊びのような感じでよく行う.プリズムでは、毎回、二人ともとても楽しい時間をすごせているようだ.ただ、最近は粘土に関してはATちゃんの抵抗にあい、かと言って、UTちゃんは粘土大好き少女だし、私も粘土は触覚を通して生命力に働きかけるという意味でも、とても必要なワークだと思っているので外せないし…AYAKAちゃんのみ別メニューとなる.

   

それで、今日は最初に、プリズムの他の生徒が時間をかけて作っている‘みつろう粘土’の人形を見せた.色鮮やかな妖精たち、森のキノコや木の実など、それはそれは愛らしく、二人が「わああかわいい!これ誰が作ったの?」歓喜の声を上げたのは言うまでもない.そして、AYAKAちゃんの中で何かが変わった.「私も作ってみたい!」 作りたいという意欲が自分を縛っていた感覚の抵抗を超えたのだ.こういう瞬間に遭遇するにつけ、それは私にとっても大きな喜びであり、エネルギーの源泉にもなる. 「常に、その子が今いるところから始めよう…」治療教育のこの鉄則の意味を改めて実感する.

   
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